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2008年12月 2日 (火)

あたるも八卦 前編


あたるも八卦


前編


祭りでにぎわう屋台の列

〝 ビックリするほどよくあたる 〟
〝 貴方の未来を占います 〟

その列の端っこに充分な照明も与えられず、ひっそりと建っていた怪しげなテントにはそんな看板が掲げられていた。


桜子と滋と遊びに来ていたつくしは、その占いのテントに何か惹かれるものを感じていた。
「なんか気味悪いっぽいけど・・・」
――気になる
「ホント、なんか不気味ですよね」
「うーん、でも・・・」
――どうしても気になるのよね
つくしは不気味で怪しげなテントを見つめたまま考え込んだ。
「先輩まさか入る気ですか?どう見てもイカサマですよ
 やめたほうがいいんじゃありません、それに・・・」
「桜子、ちょっと」
「なっ、なんですか?滋さん」
脇をきょろきょろ見ていた滋が突然桜子の腕を引っ張ってつくしから遠ざかった。


「桜子、これってチャンスじゃない?」
「チャンスって・・・滋さん、その目の輝きはなんですか?」
「つくしが占ってもらっている間に、あたし達は新しい出会いを!」
「・・・出会いって、もしかして私たちの魅力を・・・」
「さっすが桜子だわ
 あたし達の美貌を世の男どもに思い知らせるチャンスよ」
「そうですね、男はF4だけじゃありませんものね」
こんな話をしているとはつくしは知る由もなく、テントと2人を交互に呆然と眺める。


怪訝そうな表情を浮かべていた桜子の口角が上がり、小悪魔的に瞳が輝いたように見えた。つくしはまた2人がよからぬ事を企んでいるのではないかと声を掛ける。
「ちょっと!そこの2人!
 あたしに聞かれるとマズイことでもあんの」
「ま、まさか。・・・ねえ~桜子」
「そうですよ
 私たちの間で隠し事なんてあるわけないじゃないですか」
動揺する滋、何事もなかったように振舞う桜子だが、見るからに怪しげな2人。でもつくしの心はその2人よりも更に怪しげなテントの方に傾いていた。
そんなつくしの心を見透かしたように桜子が言う。
「先輩、みてもらったらどうですか?」
「つくし行ってきなよ、あたし達のことは気にしなくていいからさ」
「でも・・・、あたしのために2人を待たせるのは悪いし・・・」
「私たちなら心配いりませんよ、時間の使い方上手ですから」
「気にしなくていいから、つくし行ってきなよ」
「ごめん、じゃあちょっと行ってくるね」
「「ハ~イ!いってらっしゃ~い」」

――なに?あの作られたような笑顔は・・・
   絶対なんか企んでるんだから
そう思いながらも、一度気になり出すとその事しか頭に入らないつくしは占いテントの方へとどんどん足を進める。笑顔で手を振る2人を尻目に、つくしは恐る恐るテントの中に足を踏み入れた。


テントの中へとつくしの姿が消えると一目散に行動を開始する滋と桜子。
「さっ!これからよ、イイ男ゲットするわよ!」
「望むところよ!」
「チャンスは有効に使わなくちゃね」
人、人で埋め尽くされる道路と歩道には、2人の目当てであるイイ男も少なくない。そんな状況下で、獲物を狙うかのように鋭い瞳を輝かせる2人はガッツポーズを決めた。
「ねぇ、君たち2人?」
「「は~い!私たち2人だけでーす」」
「俺たちとその辺でカキ氷しない?」
言ったそばからすぐに声をかけてくる若者2人に、桜子と滋は瞳を輝かせ顔を見合わせる。
「ほらね」

ランプの赤い光に誘導されるようにテントの奥に進むと、全身を紫色の布で覆った人物が小さな机の向こうに座っていた。
「こ、こんばんは」
不気味な雰囲気に圧倒され、鋭い目つきにビビってしまう。そのまま帰りたい衝動に駆られるが、ここはグッと堪えて足を前進させる。
「お前さんよく来たな、まんずそこに座れじゃ」
低くしゃがれた声、聞いたことのない言葉遣いとイントネーションで、つくしに椅子に座るように促す。
恐る恐る椅子に座ると、突然目の前の奇怪な人物はごもごもと呪文のようなものを唱え始め、つくしに緊張が走る。

その呪文のようなものは1分ぐらい続いただろうか、それが終わったかと思うと、今度はつくしの顔をまじまじと見つめた。
つくしは目のやり場に困っていると、突然奇怪な人物が口を開いた。
「お前さんの未来に妙な影が映るじゃ」
「はっ?」
――妙な影って何よ?あたし何も頼んでないんですけど
水晶に両手をかざし、あたかも映像が映っているかのように覗き込む怪しいオババ。
「わだしには見えているのじゃ
 お前さんと周りの4人の男のことがじゃ」
――4人?・・・男4人と言えば・・・、ゲッ!まさか、・・・F4?
「そうじゃ、お前さんの身近に居るその男だちの中に
 未来の伴侶がいるじゃ」
――伴侶って・・・、あたしの結婚相手のこと言ってんの?
「その男の名を知りたいか?・・・・・・その男の名は・・・」
「ちょっ、ちょっと待ったぁーッ!!」
怪しげなオババに圧倒されて無言のまま耳を傾けていたが、あまりにも突然の話につくしは大声を張り上げて話を中断させた。


「ん?どうしたじゃ、聞きたぐねえのが」
「聞くも何も私はそんなこと頼んでないし」
「ほんじゃぁここで止めるか。じゃあ、ここまでだら4千円じゃ」
「・・・4千円!?」
――たかッ!勝手に占っておいて4千円って・・・
   あたしの全財産を奪う気!じゃなくて、なんでこうなる訳?
「不満か?ほんだら2千円にまけとくじゃ」
――ムッ!半額?・・・なんか適当くさいし、もしかしてやられた?
   インチキ占い師めー
「インチキなんかでねえ、わだしの占いは本物だ
 けんどここでの占いは今日で最後
 明日からは恐山でイタコをやらねばねえがら
 おまけして少しだけ教えてやるじゃ」
「はい?・・・なっ、何を?」
――取り敢えず流れってものがあるでしょうに
   それなのに客の聞きたい事を聞くどころか
   一方的に言ってお金を取ろうとするなんて
   詐欺もいいとこじゃん!・・・・・・詐欺師?
そんなことを考えているとムカムカと腹が立ってきたつくしは、オババに啖呵きってこの場から去ろうなんて考えていた。しかし、オババの口調が強くなり少しビビってしまったのと、ある事が気になってつくしは行動を起こせなくなった。


――信じられないけど、・・・たぶん、あたしの心を読んでる?
「うんだ、これでわがったが」
――マ、ジで・・・。こんな事ってアリ?
この怪しげな占い師は人の心を読むことができた。さとりだ。
「お前さん、その男だちから苗字で呼ばれてるべ」
「確かに・・・」
――F4はみんな牧野って呼ぶけど、だから何だって言うのよ?
「お前さんのことを、最初に下の名前で呼んだ男が
 お前さんの伴侶になるのじゃ」
「なっなに?・・・そんなことで未来のダンナ様が・・・
 あたしの気持ちはどうなるのよ!F4はともかく
 大恋愛して結ばれる、なんて考えるこっちの身にもなってよね
 冗談じゃないわよ!」
「信じるも信じないもお前さん次第だべ
 まんずはぁ、ほれ2千円よこしてけろ」


つくしは聞きたいことは何一つ聞けず、結局言われるがまま2千円を払ってテントの外に出た。
待っているはずの滋と桜子の姿はなく、つくしはガードレールに腰掛けて2人が来るのを待った。
――あたしの名前を呼ぶ男が、未来の旦那様?
   でも何でF4なわけ?
   そりゃあ身近な男と言えばあいつ等だけど・・・
   それも卒業と同時にそんな時間は終わるわけで・・・
占い師の言葉を何度も繰り返し、ぼんやりと考え込んでいると・・・。


「つくし」
「つくしッ!」
「ギャッ!!」
不意に名前を呼ばれて腰が砕けそうになる。
――い、今つくしって・・・。だ、誰が呼んだの?
「つくし、何ボーッとしてたの?
 さてはまた占い師に何か吹き込まれたんでしょう
 つくしはすぐに人を信用するんだから」
「そうですよ、占ってもらって
 今まで一度だって当たったためしありました?」
――言われてみればその通り、占いなんかに惑わされてどうする
   つくし、しっかりするのよ!
   それにしても、滋さんでよかったぁ


「ところであんた達どこ行ってたの?」
「ちょっとね、イイ男がいないかなって、ね」
「こんなにイイ女がいるのに、まったく見る目がないんですから
 占いが当たるんでしたら
 どこにイイ男がいるか占って欲しいくらいですよ」
――あんたらの頭中って男しかないのかよ
「あんたたちの話ってなんか矛盾してるんですけど」
「まぁとにかく今日はダメダメ、ケーキでも食べに行こ」
滋のウップン晴らしに付き合わされるであろうカフェを目指し、つくしたちは歩き出した。つくしは数歩歩いた所でふと気になって振り返ると、あの占いのテントは忽然と消えていた。何度目をパチクリしても、ゴシゴシ擦ってから見ても、跡形もない。
「つくし、どうしたの?」
「・・・ん?あっ、いや、なんでもない」
つくしは釈然としない思いを胸にまた歩き出した。


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