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PURE ANGEL [第1章] 第1話


第1話

すべてを捨てても
牧野さえ傍にいてくれたら何もいらない
道明寺の温もりさえあれば何もいらない


お互い深く深く愛し
磁石のように引き合うふたり


港での事件が起こるまでは―
一人の少女の存在が大きく人生を変えることも―


なぜ人は間違いを犯すのか
自分のことしか考えなかったことの愚かさに
人は悶え苦しむ


司が刺され入院して5日後
ようやく面会ができるというのでつくしは病院へと
向かう。
早く司に会いたいという嬉しさと恥ずかしさが交差
するなかつくしは病室の前に立つ。
中からはみんなの話し声や笑い声が聞こえる。
一番聞きたいと思っていた司の声も…。


「よっしゃあッ!」
自分に気合を入れるつくしを脇で眺めていた類が楽
しそうに声をかける。
「クククッ…、何してんの?早く中に入ろう」
そう言って類は扉を開けて中に入り、つくしは後に
続いた。
みんなの視線を浴びる二人。


「おっせーじゃん!何やってたんだよ?」
「つくしちゃん、司ねぇ~後遺症ないんですってよ」
待ちくたびれたように言う総二郎を椿は軽く払い除け
ると、つくしに零れんばかりの笑顔を向ける。
「そりゃあ、犬並の回復力だもんな!」
その脇であきらはからかうように言う。


司が大事に至らずにすみ、みんなは安堵し自然と頬が
緩む。しかし、司の視界につくしが入った途端、顔色
が変貌する。
司は敵意を見る眼差しを向け、冷静な口調でつくしに
目掛けこう言い放った。
「その女、だれ?類の女?」
司が発した言葉が後に大きな影響を及ぼすことなど、
ここにいるメンバ-は知る由もなかった。
勿論、つくしも―


呆然としながらみんなは病室を出て担当医に事情を
聴いた。


レトログレ-ドアムネジア
医学の世界ではそう言うらしい
部分的記憶障害


強く考え過ぎて記憶の一部だけが欠落した
記憶が戻るのは人それぞれ違い、数日、数年
もしかすると一生戻らない可能性もあるとのこと

F3が司の病室に入ると、そこには見知らぬ顔が…。
「よぉ-司、元気か?」
「ああ、お前ら来たんか」
「…あれ?この子、だれ?」
「こんにちは、中島海っていいます。よろしくネ」
海は太陽のような眩しい笑顔を向けた。
「…えっ?なんでここにいるの?」
総二郎とあきらは少し驚きつつもいつもの笑顔で返し
類は興味なさそうにそっぽを向く。
「ここの看護師さんたちが噂しててさぁ~
 凄い有名人でイケ面だって言うから見に来たの
 どんな人かなぁ~って」
「ったく、勝手に入って一人でペラペラ言って
 うぜぇんだよッ!」
そこにつくしが病室へと入って来た。
つくしを見た途端、司の表情は険しくなり苛々が増し
て行く。司の視線につくしの体は反応するかのように
硬直し鼓動が速まるのを感じる。

――冷静に…、つくし落ち着くのよ
気を静めるように心で呟き口を開く。
「こんにちは」
つくしは苦笑いしながらも冷静さを保とうとしていた。
どんなに冷たい視線を向けられても…。
「てめぇ、誰の病室か分かって入って来てんのか?」
怒声の司を尻目に、海は笑顔でつくしの前に立ち挨拶
をする。
「こんにちは、海っていうの。あなたは?」
「あ、あたしは、牧野つくし。よろしくね、海ちゃん」
つくしも笑顔で返した。
そんな二人をF3は脇で眺める。
「おい!おめえらッ!
 話すんだったら外でやってくれ、目障りだッ!!」
青筋を出し今にも暴れそうな司を見て、
海はつくしの手を引いて病室を出て行った。

「もう、二度と来んなあ-ッ!!」
「おいおい、司、牧野は俺たちの大切なダチなんだぞ」
大声で叫ぶ司に呆れ顔を向ける総二郎。
それに付言するように類がボソッと呟く。
「司にとってもね」
「そうだぜ、あんまし辛く当たるなよ」
「あんな女知らねぇのに何が大切だ
 寝ぼけたこと言ってんじゃねよ
 気分わりぃ。出てけッ!」
3人は虚脱と同時に大きな溜息をつき病室を後にした。


あれから3週間が過ぎたが一向に思い出さない司。
日を増すごとに罵声を浴びせ、険しい目付きに
雑草のつくしとはいえ精神的にも肉体的にも参ってし
まい自然と病室に行く回数が減っていった。


あれ以来、海は毎日病室に行き、つくしとは対照的に
普通に会話をし、時には司の笑顔さえも見られるよう
になっていた。
司と海の展開に誰もが想定外のことに驚きを隠せない。


つくしの心境を考えるとガンバレとは言いがたい。
友人らはつくしを優しく見守る事と、一日でも早く司
の記憶が戻ることを願う事しかできない現状に俯く。


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